１９７８年。年が明け、テンポイント陣営は海外遠征を表明。

　　まずはイギリスへ向けて出発することとなった。しかしそこへ待ったが入る。

　 ∧＿∧
　（　´∀｀）　　　　海外へ行く前にもう一度テンポイントのレースを見たいﾓﾅｰ
　（　　　　）
　｜ ｜　|
　（＿_）＿）

　　という関西のファンからの声であった。

　　適当なレースを見繕ったところ、日本経済新春杯が選ばれたが、斤量がかなり重くなる。

　　６７キロ以上なら出走取り消しの予定であったが、これがなんとギリギリの６６．５キロであった。

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　　 　　 　 ／_ノ 　ヽ＼
　　 　 　／ （ ●）　（●）、　　　　　ボーイと競らなくていいんなら、普通に勝てるお。
　　　 ／::::::::⌒（__人__）⌒＼
　　　 |　　 　　　|r┬-|　　　 |
　　　 ＼ 　 　 　 `ー'´　　／
⊂⌒ヽ　〉　　　 　　　 ＜´/⌒つ
　 ＼　ヽ　 /　　 　 　 　 ヽ　/
　　　＼_,,ノ　　　　　　|､＿ノ

　　そして運命の１月２２日がやってきた…。

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　　　 　　　／⌒　　⌒＼　　　　　　これが終わったら次は海外かお。
　　　　　／（ ―） 　（―）＼
　　　 ／::::::⌒（__人__）⌒:::::＼　　　憎いあんちくしょうもいないことだし、
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　　　 ＼ 　　 　 　　 　 　 　／　　　さっさと決めるんだお。


　　この日のテンポイントの体調は、決して悪くはなかった。

　　むしろ良かったと言える。

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　　　　 　　　　／⌒　　⌒＼
　　　　　　　／（ ●） 　（●）＼
　　　　　 ／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼/⌒）　　　体が軽いお。
　　　　　 |　　　　　|r┬-|　　　　　|　ﾉ
　　　　_＿＼ 　　 　 `ー'´ 　 　 ／/　　　　　こんな気持ちで走るのは初めてだお。
　　（⌒　　 　 　 　　　　　　　 |_,,,ノ
　　　""''''''ヽ_　　　　　　　　　|
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　　　　　　　　 _ノ　＼＿＿_）
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　　　　　　　　 |＿ノ''

　　テンポイントは向こう正面まで先頭を走る。他の馬が競りかけてきても、

　　その足並みに乱れはなかった。第４コーナーに入るまでは。

　　突然、後ろに引っ張られた感じがした、と後にテンポイントの騎手は語った。

　　折れた骨が皮膚から飛び出すという開放骨折で、獣医はその場での安楽死を勧めた。

　　しかしオーナーが一日だけ待ってくれと判断を保留している間に、

　　テンポイントを助けてという電話が数千件あり、回線がパンクした。

　　　　 ／￣￣￣＼
　　　／　─　 　 ─ ＼
　 ／　 <○> 　<○>　 ＼
　 |　　　　（__人__）　　　　|
　 ＼ 　　　 ｀⌒J´　　　／
　 ／ 　 　 　　　　 　 　 ＼

　　成功確率数％という、極めて低い可能性に、テンポイントは挑戦することになった。

　　朝日新聞にて三面トップ６段抜きで報じられたテンポイントの骨折。

　　そして２３日に手術は行われた。この手術とその後の治療に動員された獣医は３３人。

　　手術は一応成功し、折れた骨をボルトでつなぎ、ジュラルミンのギプスで患部は固定された。

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　 ＼　　　　`ー'J　　　 ／
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　　担当厩務員をはじめ、６人のスタッフが寝藁の上で横になり徹夜の看病。

　　幼少期より好物だったミルクを毎日与えられ、これ以上はないというケアを受けた。

　　一時は明るい見通しも出たが、現実は非情であった。

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　　　　　 ／　　　　 ＼
　　　　／　　一'　　｀ｰ＼
　　 ／　　 （ ○） 　（○）＼
　　 i 　　　 　 （__人__）　　 i
　　　ヽ、　　　 |r┬-|　　／
　　　 　/　　　 `ー'´　 く
　　　 　i　　 丶　ヽ　　　ヽ　　　ｶﾞｼｬ
　　　 　ｒ 　 　 ヽ、__)　(_丿　　　　　 , -っ ﾟ
　　　 　ヽ、___　　　ヽ　ヽ　　ｒ. ― ┐ ｰ ｭ '
　　　　 と_＿＿_＿ノ＿ノ 　 |　乳. |　。,　つ o
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ` ー‐┘‐- ´。

　　２月１３日。患部が腐敗して骨が露出しているのが発見された。

　　もはやどうしようもなかった。

　　３月３日には、治療を断念。ハンモックで吊るされたテンポイントを横たわらせた。

　　そして３月５日。午前８時４０分。テンポイントはこの世を去った。

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　　　　 　　 ／　　　　 　　　＼
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　 <"　　 ,__,,_　　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　ヽヾ丿　　|　　　　 　 　 　 　 i　　ヽ
　　　　ヽ＆　i　 　　　　　　 　, -ii、ヽ、 )
　　　　　　　　|　　　　 へ. 　i　　　 i^ﾞ''"
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　　その死はNHKのトップニュースで報じられ、競馬中継においても報じられた。

　　テンポイントの死は、過酷な斤量での出走を改めさせる原因となった。

　　また、安楽死の是非についても多くの議論がなされた。

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　　　　　　　／　　 ヽ､_ ＼
　　　　　 ／（● ） （● ）　＼
　　　　／:::　　__´__　　　::::::　＼　　　彼が死んだのですか…。
　　　　| 　ｌ^l^lｎー'´　　　　　　 |
　　　　＼ヽ 　 L　　　　　　　 ／
　　　　　　 ゝ 　ﾉ
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　　トウショウボーイのその後についても、語らねばなるまい。

　　トウショウボーイは日高軽種馬農協から乞われて、種牡馬となった。

　　しかし内国産種牡馬への偏見はまだ強く、最初の数年は質の良い繁殖牝馬が集まらなかった。

　　　　　 　 ／￣￣￣＼
　　　　　 ／　ノ　　　　ヽ ＼
　　 　 ／ 　 （●） 　（●）　 ＼　　　　さすがにそこまでは僕の責任ではありません。
　　 　 |　　　 　　__´　_　　　 　|
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　⊂⌒ヽ 〉　　　 　　　　 　く　/⌒つ
　　 ＼　ヽ　 /　　 　 　　＼　ヽ　/

　　しかし２年目の産駆からミスターシービーをはじめとする優駿が続出。

　　種付け価格は最高でも３５０万円と据え置かれ、希望が殺到。

　　最終的に内国産としてはシンザンに次ぐ、４３勝の重賞勝ちをおさめた。

　　安い種付け価格に、牝馬を選ばず一定以上の能力を持つ産駆を輩出する。

　　そんなトウショウボーイはお助けボーイとも呼ばれ、種付け権を得た生産者は、

　　赤飯を炊いてそれを祝ったという。

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　　　　　　　　　　　　　　〈〈〈　ヽ
　　　　　　＿＿＿_　　　〈⊃　　}　　　　リーディングサイアーは取れませんでしたが、
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　　　／（ ●） 　（●）＼　 !　　 !　　　　２位には何度かなりました。
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　 |　　　　　 `ー'´ 　 　 　 | 　／
　 ＼ 　 　　　　　　 　 　／／
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　　また彼の産駆はセリへの出品が義務付けられていたため、高額馬が続出した。

　　さて、一頭はターフを去り、もう一頭はあの世へと駆け去った。

　　最後に残ったのは、やはり第三の男だった。

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　　　　　　 /　ヽ､_　　　＼
　　　　　. （　（● ）　　　　|
　　　　　. （人__）　　　　　 |　　　　…
　　　　　r-ヽ　　　　　 　　 |
　　　　 （三） |　　　 　　　 |
　　　　　>　ノ　　　　　　 /
　　　　/ 　/ ヽ　　　　 /
　　　/ 　/　へ>　　　 <
　　　|＿__ヽ　　＼／　 )
　　　　　　　|＼　　　／|
　　　　　　　|　 ＼_／　|

　　だがこの頃から、グリーングラスの脚部不安は明らかなものとなってきた。

　　１９７８年は５戦してわずかに一勝。だがそれが天皇賞の優勝だった。

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　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ ●）（●）　　　　明らかに、あの２頭に比べればレベルは落ちるだろ。
　　|　　　　 （__人__）
　　|　　　　　　　　　ﾉ
　　|　　 　 ∩ノ ⊃ }
　 /ヽ　　 ／ ＿ノ }
　(　ヽ　 /　　/　ノ
　　ヽ　“　　/＿|　 |
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　　この年、美浦にトレセンが開場。

　　だが、この後数年して、関東馬の成績は関西馬に劣るものとなっていく。

　　それは板路の有無だと言われるが、それを語る機会はまた別の項に譲ろう。

　　福永洋一騎手が自己の持つ最多勝記録を更新。

　　また武田文吾調教師は勲五等双光旭日章受賞。

　　大小の事件は起きつつ、年は改まる。

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　　　　　　 /　ヽ､_ 　　.＼
　　　　　. （　（● ） .　　　|　　　さて、最後のレースへ向かうとするか…。
　　　　　. （人__）　　　　　|
　　　　　r‐-､　　 　.　　　|
　　　　 （三））　　　.　　　|
　　　　　>　ﾉ　　　　　　 /
　　　　/ 　/ ヽ、　.　　 /
　　 　/ 　/ ⌒ヾ　　　.〈
　 　 （＿__ゝ､ 　＼／.　）
　　　　　　.　|＼　　 　,.1
　　　　　　.　|　 ＼_／...|

　　１９７９年、グリーングラスは有馬記念を制覇。わずか４戦して１勝ながら、

　　他の３走が複勝圏だったこともあり、年度代表馬に選ばれる。

　　結果、ＴＴＧはその全てが年度代表馬に選ばれることとなったのだった。

　　またこの年は、９年連続リーディングジョッキーだった福永洋一騎手が落馬し、

　　再起不能になった年でもある。

　　 /:::/:::: /::::::::::::l::::::::|:::::::l:::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::i::::::
　　/::;ｲ::::i::::::::::::::| ::::::l|;::::::li;::::::::|､;::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::l:::::　　　　あのハイセイコーの息子、
　 .l::/ l:::::|::::::::::::/!::::::| li::::::lヽ::::::l. ヽ;:::::::::::::::::l::::::::::::::::::::l::::::
　 |::l　| ::::|::::::::-i-L;;_l .|!i:::::l ヽ::::l　　ヽ､__;;;;::::| :::::::::::::::::l::::　　　　カツラノハイセイコがダービーを制し、
　 |:!　.|::::::l::__;;;|_　l:::l｀ヽヽ;:::l　ヾ;ﾚ‐'''ﾞﾞ´＼ :::::| ::::::::::::::::l:::::
　 l! 　.|:::／ ___ノ,ｨ'ﾄ|''=ﾐ､ ヾ!　　,r-=fニﾐ;;弍;;| :::::::::::::::l~ﾞ'i　　　　父の雪辱を果たしている。
　　　　l/　,/ﾄ､::lﾞ__ﾞヾ::ii::|ヽ　　,/　　.|:::illi:::ﾞii/ |:::::::::::::::j¨ﾞ l
　　　/⌒ヾ､|/`fﾄ l　ﾞK);j .l'⌒''h.　　 K);;;;ｯﾘ　l:::::::::::::/　.ﾉ
　　/‐-､ `iﾉ　/'ヽ|､　　 ノ 　　 ヾ､ 　 　　,/　 |:::::::::::/=7ﾞ　　　　ではＴＴＧに関して、その最期を語ろう。
　./　､. ヽ |ﾞV,_ 　l:::i､￣　丶 　　　ﾞ''ｰ-‐''　　,l::::::::::/|:;/
　i　 'ﾞヽ_j-'　　　.|::::|.＼　　　‐- 　　　 　 　,,ｲ::::::::/ ,l/
　ヽ　　　 ヽ　　 jl:::::l. 　 ヽ､　　　　　 ,　''ﾞ　/:::::::/ﾞ｀ヽ､
　　ヽ､.　　　　 /ヽ::::|　　　 ,,｀=ｰ '''i´　 　 /:;/ﾚ'〉;:;:;:;:,.,＼
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　　トウショウボーイは数多くの血を残し、種牡馬として活躍した。

　　１９９２年に蹄葉炎を発症。安楽死処分された。

　　その死は多くの人々に惜しまれた。

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　　　／　　 _ノ　　＼
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　　.　 |　　　　　　 　 }
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　　　　 ヽ　　　　　ノ　 　 ﾋﾞｼｯ
　　　　　/　　　 く＿＿,-ｭ__ 　 て
　　　　　|　　　　＿＿＿ 三） 　（
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　　グリーングラスもまた種牡馬となったが、トウショウボーイほどの活躍はしなかった。

　　それでも数少ない産駆からＧⅠ馬を出している。

　　１９９６年には種牡馬を引退し、２０００年に放牧中の骨折が元で安楽死処分されている。

　　ハイセイコーの出現から、ＴＴＧの活躍までのおおよそを、第一次競馬ブームと呼ぶ。

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　　　　　　 ,..-.:.￣.:..:..:.. : : : : ｀丶、
　　　 　 ／:..:..:.　..: : : : : : : : : : : : :＼
　　　　/:ﾍ=､､:.＿: : : : ＿＿:ヽ:_:　-^,.ﾄ､
　　　ノ:..:..:./:.. ￣: :７´:―― : :|‐: :´､: ヽヽ
　　ｰ-/:..:.i:../:. : : ,/:..:.:ｲ:.ﾊ:.. : j:.. :}:.､ヽ:. ﾄヽ　　　　次回は少し趣を変えて、
　　　 !:..:..:|:.{/:..ィ_jz≦ﾉ '　}:.／_}_ｲ:. } |:.｜||
　　　 Vl:.:.|:. Vl´｢＿　､｀　ﾉ′ ＿ﾉ:ｿ:ｲ: ﾘ ﾉ　　　　「スーパーカー被害者の会」と
.　 　 　 }:ハ: : l f7｢::｀ﾊ　　　/:::7}7ｲ:/}/
　　　　 ﾉﾍｰl､: :!VZﾂ　　 　 ﾋ:ﾉ/:.//　　　　　　　　この時期の種牡馬事情について
　　　 　 　 ｀ｨﾍ:ﾄ､ _　　　_ 　 ノ:ｲ/
　　　　　 rく､＼｀ ヽ二コ:千:|K、′　　　　　　　　　語ろうと思う。
　　　　　 |:..:ヽヽ＼: :Yﾆ|: :!:/j!:.l
　　　　　 ﾄ:..:..:.＼ヽ＼!r|┴＝ミ!r ァ７
　　　　　｜!::.:..:.ヽ＼ヽ|!　　　 /７　/
　　　　　 j::.l::..:..:.⌒ｰｧ⌒} 　 / / /^}
　　　　　 |::.:.＼::..::.::.::>ｰ'―-L∠_¨´
　　　　　 l::.::.:..:.￣￣ト ､, --､―弋i
　　　　 　 ヽ::.:..:..:.::..∧/　　　 ヽ　 i _ ..　-―
　　　　　　 ｀｀ｰニ´／ー-､　　 |　_|
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　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ:..__:L_|
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.__)ﾉ

　　　　第１３話　TTGの時代（完結編）　　了　　　　　　　　　　　　　　　　　to　be　continued…

というわけで再度予定を変更して、次回はマルゼンスキー無双でお送りします。